「話を聞くだけで100万円」「当選したので3億円を支援」などとうたう“利益誘引型サイト”の相談が、毎年約3,000件寄せられています。典型的な手口と注意点、相談先を弁護士が解説します。
目次
利益誘引型サイトとは何か
「相談にのるだけで報酬がもらえる」「当選金を受け取ることができる」などとうたい、消費者をサイトに登録させたうえで高額な支払いをさせるサイトが「利益誘引型サイト」と呼ばれています。
国民生活センターは、こうした利益誘引型サイトに関する相談が全国の消費生活センター等に年間約3,000件も寄せられていると報告しており、決して珍しいトラブルではありません。
利益誘引型サイトでは、多くの場合「副業で簡単に稼げる」「当選金が受け取れる」といった魅力的なメッセージから始まり、利用者は気軽な気持ちでメールアドレスなどを入力して登録してしまいます。
しかし、登録後に始まるのは「悩みを聞くだけの副業」でも「当選金の受取り」でもなく、メッセージ送受信や手続き費用などの名目で、さまざまな支払いを繰り返し要求されるやりとりです。
相談件数から見える被害の広がり
国民生活センターが運用するPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)への登録状況によれば、利益誘引型サイトに関する相談件数は、2016年度3,179件、2017年度2,932件、2018年度3,410件、2019年度3,309件と、毎年3,000件前後で推移しています。
2020年6月30日までの相談件数は646件で、前年同期の460件を上回っており、短期間で見ても被害が後を絶たない状況です。 これらの数字は、あくまで消費生活センターに寄せられた相談の一部に過ぎず、実際には相談に至っていない被害も多数存在すると考えられます。
相談件数が高止まりしていることからも、「簡単に大きな利益が得られる」との甘い言葉に引き寄せられ、同様のトラブルが繰り返されている現状がうかがえます。
典型的な流れと手口
利益誘引型サイトの多くは、次のような流れで消費者を巻き込んでいきます。
- 「相談にのるだけで100万円」「当選金を受け取れる」などと誘う広告やメールを見せる。
- 無料会員登録などの名目で、メールアドレスなどを入力させてサイトに登録させる。
- 登録後、「報酬を受け取るには有料会員登録代が必要」「当選金受取りのための手続き費用が必要」といった説明をし、サイト内ポイント購入や手続費用の支払いを求める。
- 一度支払いに応じると、「高額のため証明書代が必要」「手続きが完了していないので追加の費用が必要」などと、次々に新たな名目で支払いを要求する。
- どれだけ支払っても、約束された報酬や当選金が実際に支払われることはなく、連絡が途絶えるなどしてトラブルになる。
特に注意が必要なのは、支払い手段としてプリペイド型電子マネーのギフトカードなどが使われるケースです。
コンビニで購入した電子マネーのコード番号をサイトに伝えるよう指示され、コードを伝えてしまうと、後から取り戻すことは極めて困難になります。
なぜ支払いをやめられなくなるのか
副業型の利益誘引型サイトでは、利用者が支払いをやめにくくなるような仕掛けがいくつも組み込まれています。
「ここまで払ったのだから」という心理
最初に1万円を支払ってしまうと、「あと少し払えば100万円がもらえるはずだ」と考えてしまい、追加で2万円、3万円と支払いを続けてしまいがちです。
“仲間”や“担当者”とのやりとりによる安心感
やり取りの相手方以外に、弁護士や報酬担当者など、肩書きを持った人物が登場し、「今手続きが進んでいる」「一緒に頑張ろう」といったメッセージを送ることで、利用者に安心感や期待を持たせます。
手続きが進んでいるように見せかける演出
「100万円を2回に分けて渡す」「高額のため追加の証明書が必要」といったやりとりで、まるで本当の手続きが進行しているかのように見せかけますが、実際には支払い額を増やすための口実に過ぎません。
こうした要素が重なり、「おかしいかもしれない」と薄々感じながらも、なかなか途中でやめられない状況に追い込まれてしまいます。
相談事例から見える問題点
国民生活センターが紹介している事例の一つでは、副業サイトで「話を聞いてくれたら100万円あげる」という誘いに応じた消費者が、報酬担当者から「有料会員登録代として1万円が必要」「高額のため証明書代としてさらに2万円が必要」などと説明され、プリペイド電子マネーのコード番号を複数回伝えてしまいました。
ところが、その後相手からの連絡は途絶え、インターネットでサイト名を検索すると「悪質である」といった書き込みが見つかったため、被害に気付いたという経緯が報告されています。
- 副業仲間を名乗るサクラから「一緒に頑張ろう」「報酬を受け取った」と言われ、ポイント購入を続けてしまったケース
- 「携帯一つで稼げる」と誘われたものの、報酬を受け取るための手続費用を次々請求され、支払が困難になったケース
- SNSで知り合った相手からサイトに誘導され、やりとりを続けるためにポイントを購入し続けたケース
- 「○○万円が当選した」とのメールをきっかけに複数サイトに登録し、当選金を受け取るためと信じてポイントを購入したケース
- 「政府指定救済金に当選し、3億円を受け取れる」と信じて手続費用の支払いを続けてしまったケース
- コロナ禍で収入が減ったため在宅ワークサイトに登録したところ、報酬を受け取るためと説明されて支払いを続けてしまったケース
いずれのケースでも共通するのは、「簡単に大きなお金が手に入る」という期待を抱かせたうえで、サイト側の指示通りに支払いを続けても、結局は一円も受け取れないという点です。
被害に遭わないためのポイント
国民生活センターは、利益誘引型サイトのトラブルを防ぐため、次のような点に注意するよう呼びかけています。
- 「相談にのるだけで報酬がもらえる」「自宅で簡単に稼げる」などとうたうサイトには安易に登録しないこと。
- メールやメッセージで「○○円が当選した」などと簡単にお金がもらえる話が来ても、返信したりリンクを開いたりしないこと。
- やりとりをしている相手の言葉をうのみにはせず、冷静に判断すること。
これに加え、法律実務の観点からは、次の点も重要です。
- 一度でも支払ってしまうと、「ここまで払ったのだから」と心理的に引き返しにくくなり、被害額が膨らみやすいこと。
- 連絡がついているうちであれば、支払方法や相手の情報を把握しやすく、被害回復の端緒をつかみやすいこと。
少しでも違和感や疑問を持った時点で、支払いを止めて第三者に相談することが、被害拡大を防ぐうえで非常に大切です。
被害に遭ったかもしれないと思ったら
「これは詐欺かもしれない」「支払いを続けて大丈夫か不安だ」と感じたら、その時点からは一切の追加支払いを止めることが最優先です。
あわせて、やりとりの履歴(メール・サイト内メッセージのスクリーンショット)、サイトの画面、プリペイド電子マネーのレシートやコード番号の控え、クレジットカードの明細などをできるだけ保存しておくことが、後の対応に役立ちます。
そのうえで、今後どうすべきか、返金の可能性があるか、どこまで支払いを止められるかなどについては、早い段階で法律の専門家の意見を聞いた方が、選択肢を広く持てます。
当事務所では、こうした副業名目・当選金名目のサイトに関するご相談を多数受けており、支払方法や相手の状況に応じて取り得る対応策(交渉、事業者・決済会社への連絡など)を一緒に検討しますので、一人で抱え込まず、できるだけ早い段階でご相談ください。