占い詐欺に引っかかりやすいテーマ – 健康・人間関係・お金
人が持つ悩み・欲のほとんどは「健康」「人間関係」「お金」の3つだといわれています。そこをつけ込むのが占い詐欺。インサイト法律事務所が相談を受け、解決してきた事例を見ていくと、ほとんどがその3つの悩みや、心の隙につけ込まれ、大切なお金を騙し取られています。なぜ騙されてしまうのか。それは占い詐欺を行うグループは心理学の理論やマーケティング手法を巧みに悪用しているからなのです。その典型的なパターンをご紹介いたします。
占い詐欺事例1:悩み相談から支払った総額は約60万円

最初にご紹介するのは突然の迷惑メールから悩み相談、占いの泥沼にハマり、総額約60万円の被害となった事例です。
突然のメールは「偶然」を装った運命の演出
被害者が業者を知ったきっかけは2022年(令和4年)11月7日、突然スマホに届いたメールからでした。身に覚えのないところからのメールを開けてしまったところがこの詐欺の入り口となりました。なぜこんなメールを開いてしまうのか、それは相手も騙しのプロ。「どんな夢がありますか」「豊かな心と幸せになれる在り方を知りたくありませんか」など、心に隙や油断があれば開いてしまいたくなるようなタイトルのメールを送ってくるのです。
たまたま人生の節目や、将来に漠然とした不安(健康・人間関係・金銭)を抱えているタイミングで届くと、人はそれを「偶然ではなく運命」だと錯覚してしまいます。
ダイレクトレスポンスマーケティング(DRM)の4大市場
被害者はそのメールに「健康」「対人関係」「お金に困らない人生」と答えを送ってしまいました。この答え、アメリカの通信販売、ダイレクトレスポンスマーケティング(DRM)において、景気が悪かろうが時代が変わろうが、人間が生きている限り需要が消えない分野にぴったりと合うものでした。そしてこの分野は人間が論理を無視してでもお金を払ってしまうほどの「Evergreen Markets(不滅の市場)」と呼ばれています。
・Wealth(富・稼ぐ): 投資、副業、ギャンブル、宝くじ
・Health(健康・ダイエット): 若返り、不治の病、痩身
・Relationships(人間関係・愛): 復縁、孤独、結婚、不倫
・Happiness/Spirituality(幸福・精神性): 占い、救い、自信、スピリチュアル
被害者が挙げた「夢」は「不滅の市場」そのものだったのです。
専門性の高そうな肩書きで権威付け
業者は被害者に「金運鑑定士」を名乗る人物を紹介します。こんな肩書きはもちろん実在しません。しかし、ただの占い師ではなく「金運鑑定士」といった、実在しそうで専門性の高そうな肩書きを使うことで、権威付けを行い、ターゲットの警戒心を解きます。
行動ファイナンスにおける認知バイアス「コンコルド効果」
金運鑑定士を名乗る人物から、お祈りをするためにポイントを購入する必要があると言われ、被害者は最初に5,000円分のポイントを購入しました。
占い詐欺、払えなくはない金額から始まります。たとえ額がわずかであっても一度お金を払ってしまうと、人間は「自分の選択が間違いだったと認めたくない」という心理、「自分の選択は正しい」と思いたがる一貫性の原理が働きます。結果として、「あと少しで幸せになれる」「ここでやめたら今までの分がムダになる」と追い込まれていき、気づいた時には大金になってしまうのです。
「ここでやめたら今までの分がムダになる」という心理は行動経済学における認知バイアスの一種である「コンコルド効果」、あるいは「サンクコスト効果」として知られています。
依存させるための頻繁なメール
その後も被害者には業者から頻繁にメールが届き、祈祷、霊視、鑑定などを理由にポイント購入を求められ、それに応じて何度も購入することになります。業者が毎日のように頻繁にメールを送るのは、相手をメールに依存させるためです。
「自分の悩みを親身に聞いてくれるように見える」存在になってしまうと、冷静な判断力が失われ、生活の一部になってしまいます。ポイントの購入で生活が苦しくなっても、コンコルド効果で、「信じたい(詐欺であってほしくない)」「あと1回ポイントを買えば、奇跡が起きて元が取れるはずだ」という心理に支配され続けます。
その結果、被害者は約60万円を業者に支払ってしまったのです。
占い詐欺事例2:一生無料だったはずが約50万円

次にご紹介するのは無料占いから勧誘され、わずか約1ヶ月で約50万円を騙し取られた被害者の事例です。一生無料だったはずが、気がつくと連日、有料ポイントを購入するよう促され、言われるがまま購入。占い詐欺グループ側は宝くじの1等当選番号を約束していましたが、いつまでたっても番号を教えてもらえないことで、この被害者はご自身が詐欺に遭っていると気がつかれたのです。
ポイントによる消費は金銭感覚の麻痺に
この方は2024年2月5日、ネットの無料占いを利用したところから、占い詐欺被害が始まります。最初は縁起物となる縁具の製作の鑑定をするため、と500円分のポイントを購入させられます。そこから占い詐欺業者はハイペースで金額をアップさせていきます。その支払い履歴を見ていきましょう。
第1回:2024年2月5日 500円
第2回:2024年2月8日 30,000円
第3回:2024年2月9日 29,000円
第4回:2024年2月10日 20,000円
第5回:2024年2月12日 1,200円
第6回:2024年2月13日 10,000円
第7回:2024年2月15日 53,000円
第8回:2024年2月16日 92,000円
第9回:2024年2月19日 80,000円
第10回:2024年2月20日 70,000円
第11回:2024年2月21日 26,000円
第12回:2024年2月23日 90,000円
第13回:2024年2月24日 28,000円
第14回:2024年2月25日 29,000円
第15回:2024年2月26日 5,000円
第16回:2024年3月5日 1,500円
約1ヶ月間、ポイント購入は全16回。この履歴で見れば、金額が大きくなっていくので気が付くはずだと思われるでしょう。しかし、騙されている当人はポイントを購入し、度々ポイントという形で消費しているため、金銭感覚が麻痺してしまっているのです。
「紹介」による権威のすり替え
このポイント購入額がアップしていく中で被害者は不審に感じ、クレームを入れました。そこで業者は別の占い師を紹介します。この占い詐欺師は「宝くじ1等を100%当選させる」と約束します。
このように「もっとすごい人」を紹介していくのは、「劇場型勧誘」と呼ばれるマーケティング手法を悪用しています。「今の担当では限界だが、この先生なら100%救ってくれる」と期待値を上げ続け、支払いを正当化させるやり方です。そして、その後もクレームを入れるたび、別の占い詐欺師たちが登場してきます。
ここでは「宝くじ当選」が共通のゴールです。そのゴールに向かって、あらかじめ書かれた台本のように複数のキャラクターが入れ替わり立ち替わり登場して、被害者の感情を揺さぶっていく、これが劇場型と呼ばれる所以です。
消費者契約法における「断定的判断の提供」で明らかに詐欺
実は「100%当選させる」というところで詐欺行為が確定します。この発言内容は消費者契約法における「断定的判断の提供」となります。断定的判断の提供は、消費者契約法4条1項2号に基づき、値上がり、効果など、将来の変動が不確実な事項について、事業者が確実であると誤認させて契約させる行為です。
この行為については政府広報オンラインでも紹介されています。
https://www.gov-online.go.jp/article/201803/entry-8412.html
口止めによる孤立化
交代した占い詐欺師は被害者に「現在購入しているポイントの金額を誰にもいわないこと、親族にもいわないということ」を約束させます。その理由として占い詐欺師は「宝くじに1等当たると知らない親族が出てきて借金申し込まれてお金が無くなるから」と説明します。
これは詐欺の典型的なパターンであり、最も卑劣なポイントです。「宝くじが当たると親戚が寄ってくるから」という、一見もっともらしい理由をつけて口を封じ、相談相手を奪い、孤立化させるのです。被害者は冷静な第三者の目から遮断され、詐欺師の世界観にどっぷり浸かってしまいます。
2つの占い詐欺事例からわかること

冷静になれば「明らかな詐欺」なのですが、なぜ多くの人がこのような手口の占い詐欺に引っかかってしまうのでしょうか。そこにはいくつかの共通点も見えてきます。
第一段階:健康・人間関係・金という悩みで接触
事例1・2ともに、人間の誰もが持っている普遍的な悩み(健康・人間関係・金)を入り口にしています。事例1では「どんな夢がありますか」と問いかけ、本人の口から悩みを語らせることで、相手に「この人は自分を理解してくれる」という錯覚を与えました。一方、事例2では「宝くじ」という、現状を劇的に変えたい欲求に100%の保証を与えることで、理性の壁を破壊しました。
第二段階:「少額投資」と「一貫性の原理」で洗脳の開始
どちらも最初は500円〜5,000円という「試してもよいかもしれないと思える金額」から始まっています。そこで一度支払ってしまうと、人間は「自分の選択は正しい」と思いたがる一貫性の原理が働きます。支払額が増えるほど、「ここでやめたら今までの投資が無駄になる」というサンクコスト(埋没費用)の呪縛に陥ってしまい、引き返せなくなります。
第三段階:「劇場型勧誘」による信憑性の演出、権威付けで加速
事例2で顕著ですが、担当者が次々に「より上位の鑑定師」へと交代していきます。「この人よりもっとすごい先生の鑑定を受ければ、きっとできる」「きっと実現できる」「当たる」と期待を繋ぎ止めることになります。複数の人物が登場し、同じ、当選という目的のために動いているように見せることで、客観性を装い、信じ込ませます。この流れは詐欺の成功までさらに加速していきます。
第四段階:「口止め」による外部遮断で詐欺行為の成功へ
事例2にある「宝くじが当たると親族が揉めるから言うな」といった、「被害者のためを思っているフリをした口止め」は致命的です。これによって、家族や友人の助言という「正気に戻るきっかけ」を組織的に排除しています。
被害者の心理状態

この占い詐欺に遭っているときの被害者はドーパミン依存となっており、「もうすぐ当選する」「鑑定が完了する」というメールを受け取るたびに脳が興奮状態にあり、冷静な判断力が低下しています。また、「詐欺かもしれない」という不安を、「これだけ払ったのだから本物のはずだ」という自己正当化で解消しようとしています。周りから孤立していなくても、この心理状態に陥っていると、なにをいっても聞く耳を持たない状態になっています。
占い詐欺はマーケティング理論を悪用!ご注意を
占い詐欺は「もっと健康になりたい」「金銭的に裕福になって家族を楽にさせたい」「今の苦しみから抜け出したい」など、人間であれば誰しも持つ欲求に対して、現代のセールスマーケティングにおいて確立されているトップレベルの「売る技術」を悪用して、お金を騙し取っています。そのため、自分が騙されていることに気がつかないのです。騙されても決して恥ずかしいことではないのです。騙し取られたお金を取り戻したいとお悩みの場合、インサイト法律事務所へご相談ください。




