競馬詐欺の始まりはマッチングアプリから!?

異性と知り合ったり、仲間を見つけたりするのに利用されているのがマッチングアプリです。スマートフォンのユーザーが増えたことから、出会いのきっかけづくりは出会い系サイトからマッチングアプリへと変わってきました。そうした中、最近、増加しているのがマッチングアプリで知り合った異性あるいはその異性の友人なる人物が登場し、競馬による投資を勧誘するというパターンの詐欺です。アプリ経由ということもあって、詐欺の手口には競馬投資ソフト(アプリ)を販売するというものがよく見られているようです。私どもインサイト法律事務所への相談で増えてきているのが、このマッチングアプリを使った競馬詐欺です。

競馬詐欺、その手口は複雑・多様化

競馬詐欺というと「着順がわかっているレースがある」「関係者からの秘密の情報がある」といった偽の情報を高額で購入させるという手口が知られています。しかし、最近はこうした競馬詐欺の手口について注意喚起が行われていることから、周知が図られてきており、騙される人も減少傾向にあるため、新たな詐欺の手口が広がってきています。それが人と人が出会える場を作るマッチングアプリを悪用して行われる競馬詐欺です。

マッチングアプリを悪用したデート商法

競馬詐欺で最近、増加しているのが、マッチングアプリで知り合った異性に競馬ソフト(競馬アプリ)を売りつけるという手法です。

具体的にはマッチングアプリを利用して、喫茶店やカフェで直接面会を約束して、会話をしている最中に偶然を装った第三者や業者が介入し、契約へと誘導するというものです。これはいわゆるデート商法と呼ばれるものです。デート商法は言葉巧みに勧誘して異性に好意を抱かせ、相手の感情につけ込んで契約を締結させるという悪徳商法です。恋愛感情を利用し、断りにくくするというのがポイントとなっています。

売りつけられるのは競馬の自動投票ソフト

この競馬詐欺で売りつけられるソフトウエア(アプリ)ですが、名称は異なるものの、うたっている機能はどれもほぼ同じです。「競馬の知識は不要」「AIがデータを分析し、自動的に馬券を購入してくれる」「全自動」「放置していても稼げる」「競馬で投資ができる」など。詐欺師がこのソフトの価格として提示してくる金額は80万円から100万円というパターンが多く見られます。そもそも競馬はギャンブルです。確実に稼げるというものではありません。投資ではありません。

マッチングアプリで競馬詐欺に遭った20代女性

ここで私どもインサイト法律事務所が返金交渉を行った事例をご紹介いたしましょう。被害に遭われたのは東京都在住、20代の女性です。

偶然を装った人物が登場

この女性はマッチングアプリでイケメンの男性Aと知り合い、都内の喫茶店で会うことになりました。喫茶店で会話を楽しんでいたのですが、男性Aは「偶然、近くに大学の先輩Bがいるので合流しよう」と、女性に提案します。この先輩Bは競馬詐欺の共謀者ですが、この時点で被害者の女性はそんなことを知る由もありません。

先輩Bと合流したAと先輩だというBはなぜか貯蓄の話を持ち出し、Bが儲かっている、稼げているという話題になります。そこでBは自分が儲かっている、稼げているのはあるツール、システムを使っている、二人が稼ぎたいなら、ソフト販売業者を紹介する、というのです。女性はAから誘われ、3人でその業者のオフィスに行く約束をさせられます。この時点で、ソフトがどんなものなのという説明は一切行われません。

消費者金融でお金を借りて購入することに

後日、被害者の女性、マッチングアプリで知り合った男性A、そして先輩だというBの3人はソフト業者のオフィスとされるマンションの一室に行くことになりました。ここで初めて、業者から稼げるというソフトが競馬投資ソフトだということを知らされます。

被害者はご自身が競馬を全くやったことがなく、またソフトの価格が90万円近くすることから、最初は断ります。しかし、Aから「自分も一緒にやる」と誘われ、心が揺らぎます。業者は「最初はみんな借金をして始める。お金は消費者金融で簡単に借りることができる。その分はすぐに回収できる。あっという間に貯金もできるようになる」と、AやBとともに被害者を煽りました。

結局、女性は消費者金融で競馬ソフト購入費用の全額を借り入れました。この時点でも女性は自分が競馬詐欺に遭ったと気がついていませんでした。

特商法での訪問販売におけるクーリングオフ期間を過ぎると

競馬投資ソフト購入の際、業者側と被害者の女性は契約を結んでいました。この場合、特定商取引法(特商法)における訪問販売という形式による契約になります。訪問販売における契約では同法に基づき、契約書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、契約した購入者は申込の撤回や契約解除、つまりクーリングオフが可能です。クーリングオフは申込みや契約後にも、考え直して、無条件で申し込み撤回、契約解除が可能な制度です。

詐欺師グループの仲間であるマッチングアプリで知り合った男性A、その大学の先輩だというB、そしてソフト販売業者の3人は、女性にクーリングオフされないよう、購入させてから2週間程度は被害者となった女性に連絡をとり続けます。Aは次のデートの約束を、Bと業者はサポートの連絡をこまめに行うのです。

しかし、2週間が過ぎて、クーリングオフができなくなると連絡が取れなくなるようになってしまいます。お金を騙し取ったら女性は用なしになったというわけです。

マッチングアプリの競馬詐欺、返金は求められる?

マッチングアプリで行われた競馬詐欺、返金してもらうことはできるのでしょうか。これまでに解説ししたように、契約から8日間であれば、ご自身でクーリングオフ手続きを行うことができます。しかし、8日間を過ぎていた場合にできるだけ早く、消費生活センターや相談窓口を開設している法律事務所などへ向かわれた方が良いでしょう。

競馬詐欺の8日間のクーリングオフ期間の場合には

クーリング・オフの方法ですが、ご自身がハガキなどによる書面で行えるほか、電子メールやLINEや電話でも可能です。業者にクーリングオフの対象となる契約を特定させるため、必要な情報として、契約年月日、契約者の名前、購入商品名、契約金額などに加えて、クーリング・オフの通知を行う日を記載したものを送ります。クレジット契約をしている場合は、販売した業者だけでなく、クレジット会社にも同時にクーリングオフを連絡しなければなりません。

郵送の場合には特定記録や書留などの送付記録が残る方法で送付します。また、送付する書類のコピーも取っておくことが重要です。電子メールやLINEなどの場合には送信済みメールの保存やスクリーンショットの保存を行っておきます。

クーリングオフ期間を過ぎると返金交渉できない?

今回ご紹介した事例で詐欺師グループはクーリングオフ期間に申し込み撤回、契約解除されないよう、デートを持ちかけたり、サポートしたり、といった手段を採りました。マッチングアプリを利用した詐欺行為は競馬詐欺以外でも、クーリングオフさせないため、この手段がよく使われています。

しかし、クーリングオフ期間を過ぎてしまっても返金交渉は諦めないでください。返金交渉を行える場合があります。

まず、マッチングアプリで誘ってきた相手の勧誘内容や方法、サポートの内容で違法性を確認する必要があるため、アプリでのメッセージやチャットのスクリーンショット、連絡にLINEなどをお使いになられていたのであれば、そのやり取りなども保存してください。また、売買契約書などの書類、購入したソフトなども処分や削除しないようにしてください。これらは返金交渉の際、詐欺行為があったことを立証するために重要なものとなります。

マッチングアプリを利用した詐欺に引っかからないためには

今回、ご紹介した事例における詐欺師グループはマッチングアプリで知り合った男性A、Aの大学の先輩B、そして業者の3人ですが、私どもインサイト法律事務所で返金交渉に当たった他の被害事例では大学の後輩や従兄弟、家庭教師といった登場人物の場合もありました。

マッチングアプリで知り合ったばかりの相手からいきなり投資を勧められた場合、詐欺ではないかと疑った方が良いでしょう。

競馬詐欺、被害のご相談はインサイト法律事務所へ

わたくしども弁護士法人インサイト法律事務所には、代表弁護士の第二東京弁護士会所属・大川博俊をはじめ、各種詐欺に遭われた被害者を救済するべく、返金交渉に取り組んできたスタッフが在籍しています。競馬詐欺はもちろん、副業詐欺や占い詐欺、デート商法など、さまざまな詐欺の被害に遭われた多くの方々に代わって、返金交渉に携わっています。

詐欺師グループは手を替え品を替え、詐欺を続ける傾向にあります。返金させ続けることは詐欺行為を撲滅させることにつながっていきます。競馬詐欺で騙し取られたお金は取り戻せる可能性があります。ですから、被害に遭った場合、返金を諦めず、私どもインサイト法律事務所にご相談ください。